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感動の純愛ものです~♪ [ブログ紹介]

aikaさんのお部屋からトラックバックさせていただきました。


それから
俺達が別れる前の、十一月のある朝の日のことだった。

俺達の街に珍しく雪が降って、暖房器具もままならない二人の部屋で、彼女は俺にこう言った。

「…クリスマスなんてダイッキライ。クリスチャンがクリスマスを祝うのはいいよ。でもさ、クリスチャンでもない、どっからどう見ても日本人のバカップルがイチャイチャするのが我慢できないの。デートするための日じゃないでしょう?」

「正論だけど…それじゃあまりにも夢がないだろ?」

「何とでも言って。クリスマスは神聖な日であって欲しいの。」

普段は物凄く素直なのに、時々テコでも動かないような頑固な女だった。

 

 

今から思うと…あの頃から彼女は欝だったんだと俺は思う。

あれから彼女の欝は悪化の一途を辿った。

俺は結局、彼女の欝に拍車をかけるようなことしかできなかった。

 

 

 

翌年の一月には彼女は自殺未遂をした。

ただ毎日泣き続け、謝り続ける彼女に、俺はどうにも我慢がならなくなった。

彼女とは結婚するつもりだったし、あれほど愛した女はいない。

そしてこの俺をあれほど愛してくれた女もいない。

だが当時の俺は、経済力も社会的地位も何もかもが中途半端で、彼女の生涯に責任を持つことに自信が持てなくなっていた。

愛だけではどうにもならないと…あの時、痛いほど感じた。

 

 

 

「お前を愛せなくなった。別れてくれ。」

打ち明けるまでに長い時間はかからなかった。

彼女は激しく泣いたし、俺をどこまでも追いかけた。

「見苦しいって自分でもわかってる。でもお願い、私を捨てないで…何でもするから、もう迷惑かけないから、早く欝を治して元通りになるから…お願い…私を許して…。」

「自分の手首を切るような人間を、これ以上信用できないよ。」

「…ごめん…ごめんなさい。」

 

 

 

 

バレンタインの日、彼女は俺に言った。

「私は貴方を本当に心から愛してきた。そのことに自信を持っている。貴方が別れたいと言うなら…それを受け入れるのが…私が示すことができる最後の愛のかたちだと思ったから…私は別れを受け入れるわ。貴方を愛しているの。私達って、家族みたいだったじゃない?家族のように深い愛だったって私は思っているわ。」

「…うん。」

「貴方の人生の、後にも先にも私以上に貴方を愛する人はいない。」

彼女は凛として、そして断言した。

そんなことは俺だってわかっていた。

あの時の俺には、ああするより他になかった。

 

 

 

 

それから暫くして、彼女は出て行った。

 

 

 

 

 

それから俺は彼女を結局忘れることはできなかったし、新たに恋人を作ろうという気になれなかった。

あの頃よりは少しずつ余裕ができ、その度に彼女を思い出す回数が増えた。

毎日文句も言わずご飯を作って、優しく『おかえり』を言ってくれる彼女を忘れる訳がなかった。

いつだってどんな時だって、彼女だけは俺の味方だった。

別れてから日々、想いは募るばかりだった。

 

 

 

 

 

数年後のクリスマス、偶然彼女を街で見かけた。

声をかけようかと思ったが、あまりもその光景が悲しすぎて声をかけることができなかった。

彼女はデパートのショウウィンドウに飾られたクリスマスツリーを、子供のように眺めていた。

流れているクリスマスソングを口ずさんでいた。

それはまるでクリスマスに憧れる少女のようだった。

 

俺は思い切って声をかけた。

振り返った彼女は怯えていた。

 

「クリスマス、嫌いじゃなかったのかよ。」

少しの沈黙の後、彼女は優しそうに言った。

「…嫌いよ。だって…クリスマスはいつも独りぼっちだから。貴方だって…クリスマス、一度も一緒に祝ってくれなかったじゃない。」

「そうだな…三回もクリスマスがあったのにな…。」

「もういいの。私、永遠の愛を信じることが馬鹿なことだってやっとわかったし。もうね、人を本気で好きになったりしないの。結局は失って、また独りぼっちになるくらいなら、もう二度と人なんか好きにならない。」

「俺はな…あの時に…」

「いいよ、別に。責める気もないし。貴方は一人から確実に愛されるよりも、みんなの人気者でいたいんだから。…いつか、貴方にもわかる日がくるわ。」

「…わかってるよ。わかったから声をかけたんだよ。わかるか?俺の気持ちが!」

人ごみの中、俺は夢中になって叫んでいた。

「止めてよ、大声出さないで。みんな見てるわ。」

「いいから聞けよ!俺はな、あのままじゃ二人とも駄目になるって思ったんだよ。俺はお前と結婚したいと思ってたし、結婚するにはあのままの状態だったら俺はお前を幸せにできないと思ったんだよ。わかるか?俺の気持ちが!」

「…わかんないわよ!!裕福な暮らしがしたいって誰が言ったの?…勝手に…勝手に決めないで…私は…貴方に一生ついて行くつもりだったのに…。」

彼女はその場に泣き崩れた。

 

 

「なあ…今、欲しい物あるか?」

彼女を抱きかかえて俺は聞いた。彼女は俺から身を離して言った。

 

「…あれからずっと…貴方に居て欲しかった。…一つだけ叶えてくれるなら…この先、十年も二十年も、その先もずっと…クリスマスを私と一緒に居て欲しい。もう二度と、どこにも行かないで。」

 

「…それだけでいいのか?」

 

彼女は大きく頷いた。

 

「言っとくけど…俺は相変わらず金ないぞ。」

「わかってる。」

「それから…部屋も相変わらず汚い。」

「見なくても想像がつく、大丈夫。洗濯物も…」

「溜まってる。それから…」

「…はいはい、その続きはゆっくり聞くわ。」

 

彼女は笑顔で立ち上がった。そして言った。

「今度こそ信じていいのね?」

俺は彼女の手を取って言った。

「ああ。もう一生変わらないよ。…髪の毛以外はね。」

「…ばか。」

 

 

これから先も俺は彼女と手を繋いで歩こう。

十年先も二十年先も…それから先もずっと。



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コメント 7

ありがとうございますm(__)m
全文掲載していただいて何だか恐縮です。。
「感動のシナリオ」なんて言っていただいて。。そう言っていただけると照れますね。。
by (2005-11-19 22:11) 

まーふぁん

こちらでは初めまして^^
すごい心をうつ物語ですねえ~
紹介されたのがよくわかります
by まーふぁん (2005-11-20 22:11) 


ありがとうございます。そんな風に言ってもらえて光栄です。。
あれを書いた朝、いきなりバーっと物語が浮かんだので一気に書いたのでアラも目立つのですが、喜んでいただけて嬉しいです。
by (2005-11-21 08:39) 

m_kikuchi

まーふぁんさん、aikaさん、いつもコメントありがとうございます。
by m_kikuchi (2005-12-05 18:37) 

m_kikuchi

aikaさん、私の若カリし頃の初恋がハッピーエンド版だったらこんな風に終わるのでしょうかね~♪
by m_kikuchi (2005-12-08 14:47) 

…うーん、そこはノーコメントでいきましょうか?www
人は皆それぞれ痛い恋愛の一つや二つくらいありますよね…
大体普通の二人はラストはこんな風にはならないものですよwww
by (2005-12-14 03:19) 

m_kikuchi

aikaさん、このトラックバックかなり人気高いですね。さぞご本人の場所は盛況でしょうね。
by m_kikuchi (2005-12-14 17:20) 

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